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だから、ダイスケ - 松本大輔のホームページ

元衆議院議員 松本大輔のホームページ

ならぬことは・・

東日本大震災の復興財源のうち、法人だけ1年前倒しで復興特別法人税の徴収をやめるということが政府与党で検討されています。

廃止されれば、9000億の法人減税、裏を返せば税収の減少、しかも復興財源の減少ということになります。


(1)実効税率引き下げの方向性には異論なし
まず誤解のないように申し上げておかなくてはならないことは、私は法人実効税率を引き下げていく、韓国やシンガポールなどアジアの国々と比べても劣後している企業環境を是正していくという方向性については異論はないということです。

むしろ、諸外国に比べて高い日本の法人税率を是正しよう、35%程度に軽減しよう、これは我々の政権で決めたことです。13年ぶりの法人税率の引き下げという税制改正を行ったのは民主党政権だったわけです。

が、同時に、復興財源は個人だけでなく、やはり法人も含めて負担していかねばならない、そこで少なくとも向こう3年間は法人も復興特別法人税を上乗せして日本全体で連帯して負担を分かち合おうと決めました。それでも、3年間の上乗せ期間中でも38%程度、つまり現状より2ポイント程度の引き下げとなるし、上乗せが終了する4年目以降は法人実効税率は35%程度へと、それ以前に比べて5ポイント程度の引き下げとなるということだったわけです。

(2)問題は復興特別法人税の前倒しでの廃止
にもかかわらず、この期に及んで、来年から消費税を上げるので、法人だけ1年前倒しで復興特別法人税の徴収をやめよう、これは果たして公平なことなんでしょうか?


個人のほうはと言えば、復興特別所得税については今年1月から25年間、住民税については、ちょうど消費税のあがる年でもある来年から、正確には6月から10年間上乗せされる仕組みです。

ただでさえ、法人よりずっと長い間負担し続けなければならない仕組みになっています。


でもこれは、企業も6重苦7重苦と言われる中で、アジア諸国に比べて劣後している企業環境の一つが高い法人実効税率でもあるので、このまま高い実効税率を嫌気して雇用が海外にどんどん出て行ってしまっては元も子もないからという理由で、個人は25年10年負担し続けていただくけど、法人は3年という短い期間に限定しよう、裏を返せば苦しいかもしれないけど、でも個人も歯を食いしばって10年25年上乗せに耐えるのだから、みんなで被災地を支える財源を負担するんだから、法人についてもせめて少なくとも3年間はお願いしますねということだったはずです。

にもかかわらず、今回前倒しで廃止する意向と伝えられているのは、このうちの法人税分のみです。

(3)なぜ今になって道半ばの復興に水を差すのか
消費増税が景気の腰折れを招かないようにと言いますが、であればなぜ、昨年消費税の法案を議論した時に正面からそれを訴えなかったんでしょうか。


復興財源、復興増税を決めた後、消費増税を議論した社会保障と税の特別委員会で何十時間も議論したときに、法人だけ復興特別法人税を1年前倒しで撤廃する、そんな議論は提起されていなかったと記憶しています。

衆院選参院選が終わるまでは黙っておかないと世論の反発、被災地の反発を受けかねない、ひょっとしてそんな後ろめたさがあったからでしょうか。

やはりこの期に及んでの後出しの復興特別法人税の撤廃、1年前倒しでの廃止はやり方としてもいかがなものかと思わざるをえませんし、いまだ道半ばである震災復興に水を差すような税制措置は、仮に政務官に小泉氏を起用したとしても、まさにならぬことはならぬものですという類のものではないでしょうか。

実際、閣内からも、総理の意向に対し、財務大臣被災地の反発を招きかねないと慎重な姿勢を見せていたはずですし、与党内にも副総裁など異論がくすぶっているとも伝えられていました。連立を組む公明党の代表も国民が納得するか大いに疑問だとおっしゃっていたはずです。

(4)アベノミクスで業績回復ならむしろ担税力も増したのでは
復興特別法人税の前倒しでの廃止による減収分、9000億の穴埋めについて、総理はアベノミクス効果で増収を見込んでいるといっているようですが、もし本当にそうなのであれば、なら「担税力はある」じゃないか、「逆にもうあとたった1年の復興特別法人税の負担に耐えられないような企業環境ではなくなりつつある」ということじゃないでしょうか。

(5)「一体」改革に反する消費増税での肩代わり

むしろ、実体としては消費増税で肩代わりさせるようなことになりかねないからこそ、閣内からも与党内からも異論が吹き出していたんじゃないんでしょうか。


社会保障と税の「一体」改革とは、文字通り、社会保障の充実安定のために消費税をあてさせてくださいというお願いであり、消費税率引き上げによる税収増、増収分は全て社会保障にあてるというのが国民に対する約束だったわけです。

しかも10%になっても高齢化で増え続ける社会保障の財源をそれだけで賄うにはまだ足りません。


それでも、次の世代への負担の先送りを少しでも軽減していかなければならない、親に安心して長生きしてもらえる社会をこの先も守り抜いていかねばならない、その方向へと少なくとも一歩踏み出すんだと、心苦しいお願いにご理解を求めてまいりました。


しかしこれでは、社会保障の揺るぎない未来のための消費増税が、次の世代への負担の先送りを軽減するはずの消費増税が、景気対策と称して、企業分だけ復興特別法人税を1年前倒しで廃止する、9000億の穴が空く、それを肩代わりするために使われる、あるいは今年の補正でまたぞろ5兆円という数字が飛び出してきていますが、景気対策と称しては、機動的な財政運営と称しては、あるいは国土強靭化だという掛け声の名のもとに、結局はこれまでもう何十年と繰り返されてきたはずの巨額の公共事業の上積みに消えることになります。

そんなことが本当に理解されうるんでしょうか。


(6)効果にも疑問
100歩譲って、一応景気対策なんだとしても、その効果については、与党内からも税率を下げても企業にはためこむ癖がついているという批判、疑問の声も出ていたとも報じられていました。それは、アベノミクスの先行きに対する不安感であり、経営の先行きについての不透明感はまだまだ拭い去れていないということを意味しています。しかも法人税を負担している黒字企業は全体の3割にとどまっています。つまり7割の企業、企業全体の約7割にはその恩恵は及ばないということです。

すそ野の広がりを欠くこうした減税を9000億ものコストをかけて行ったとしても、やはり波及効果は限定的と言わざるを得ないのではないでしょうか。


加えて、そもそも、消費税は最終的には文字通り、消費者が負担する税金です。法人の所得税は3割の企業しか負担していなくても、消費税はあまねくすべての国民が負担しています。


にもかかわらず、最終消費者、つまり企業ではなく、消費者が負担する税の引き上げによって景気が腰折れしてはいかんという心配されている割には、その消費者、国民が同じく負担する復興特別所得税、住民税の上乗せについてはこの先も25年10年と続いていくんです。


今回はそちらの方の見直しについてはなんら言及されていません。


もちろん、私は個人の復興特別所得税を見直せと言っているわけではありません。次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代で連帯して負担を分かち合うと決めたわけですから、ここは歯を食いしばってみんなで復興を支えていかなければなりません。


なのに、復興特別法人税のほうだけ1年前倒しで撤廃する、消費税の引き上げで景気の腰折れを心配するなら、それはとりもなおさず個人消費の冷え込みへの心配であるはずなのに、その消費者、つまり個人が負担する所得税、住民税なら法人減税が雇用創出や賃上げにつながるというまわりくどい道よりもより直接的だし、まだしもという気もしますが、今回は復興特別法人税のほうだけを1年前倒しで撤廃する、しかもそもそも3割の企業しか負担していない、これでは果たして消費の落ち込みによる景気の腰折れを防ぐ意味合い自体があるのかどうか、率直に言って疑問です。


(7)税込価格の値上がりに懸念もつならそもそもなぜリフレ?
また、税込価格の値上がり、つまり物価の値上がりが景気の腰折れを招いちゃいかんと心配するなら、そもそもなぜアベノミクスはリフレ、つまり意図的なインフレを目指すんでしょうか。

確かに税率が5%→8%になれば、物価は税込で約2%あがる。
でも、アベノミクスの1本目の矢、異次元の金融緩和がもたらした円安で輸入物価はすでに上昇、小麦粉、食用油、マヨネーズ、ハム、チーズ、ガソリン、エネルギー価格・・その値上がり幅は必ずしも2%にとどまらない。

消費税率引き上げがもたらす2%の物価上昇は景気の腰折れをもたらすが、アベノミクスの異次元の金融緩和で起こった輸入物価の上昇は2%を超えていても、景気を押し上げている。これは論理矛盾じゃないでしょうか。

むしろ物価上昇への寄与度からみれば、アベノミクスの影響のほうが大きい。だとすれば、(税込)物価の上昇がもたらす消費の冷え込みへの懸念は、消費税引き上げが主因ではなく、実際には自らが主導したアベノミクスの副作用への懸念。

その尻拭いで復興財源に穴が開く、「あまロス」ならかわいいものですが、これでは「アベloss」です。その「穴埋め」に消費税引き上げによる増収分9000億が使われる。しかも消費税を最終的に負担する消費者への還元ではなく、業績が上向いていると政府もさかんに喧伝している企業への還元。これは大いなる矛盾ではないでしょうか。

(8)ならぬことは・・
いまだ道半ばの復興に水を差す、アベノミクスがもたらした物価上昇との論理的整合性も欠く、個人の所得税の復興特別税、住民税の上乗せとのバランスも欠く、そしてまさに消費者が負担している消費税の引き上げとのバランスも欠く、そんな不公平感が否めないような税の在り方、「一体」改革の名に反する、国民との約束に反する税の使い方、個人も企業も「今を生きる世代全体で連帯して負担を分かち合う」という復興の基本方針のちゃぶ台返しは、やはり避けるべきではないでしょうか。


たとえ政務官を小泉氏が務めようが、彼自身も「被災地のみなさんはあまりいい思いをしていないと思う」と語っているように、復興特別法人税だけを1年前倒しで廃止するようなことは、ならぬことは・・という類のものではないかと考えます。