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だから、ダイスケ - 松本大輔のホームページ

元衆議院議員 松本大輔のホームページ

開会

おととい通常国会がスタートしました。
チラシにも書かせていただきましたが、この国会は非常に重要な論戦の場です。

財政政策が所得の前借であるならば、金融緩和はいわば需要の前借です。インフレになるなら今のうちに買っておこうという人があったとしても、予定されていた出費が前倒しされただけ。新たな需要が生み出されたわけではないので、(企業や個人の気分を変えた、デフレから抜け出すきっかけ、端緒を作ったという評価もあるのかもしれませんが)金融緩和一辺倒にはおのずと限界があります。

需要の大前提は雇用ですが、こちらについては6月にも新成長戦略という名の規制緩和が示されると報じられております。つまり雇用はこの先一層不安定化していく恐れがあるということです。

これではむしろ需要は前倒しされるどころか、見合わせる、あきらめる方向に作用してしまう可能性が否定できない、輸出採算は改善しても内需は縮小を続けるというような、目指すべきデフレ脱却とは正反対の方向に作用してしまう可能性も否定できないのではないでしょうか。

その意味で、現政権が掲げるデフレ脱却という看板と解雇の規制緩和や異次元の金融緩和、先月発表された与党税制改正大綱(たとえば復興特別法人税の廃止)との関係性についても大いに議論されるべきだと思います。

先月の月例経済報告では、デフレという3文字が削除された一方、デフレ脱却の正式な認定は先送りされました。

本来デフレとは継続的な物価の下落です。


デフレでなくなるということは、物価が下落を続ける状況にはなくなったということです。それは円安による輸入物価の上昇でも起こりえます。これから4月に消費税が引きあがれば、これも物価上昇の一因となります。


つまり、デフレではなくなるということと、景気回復とは、必ずしもイコールではありません。


物価が上昇に転じても、緩やかなインフレに転じたとしても、それが実質的な景気回復を意味するか、賃金が上昇していくか、雇用が増えていくかどうかは別問題です


だからこそ、「デフレ脱却」という言葉の使い方については政府も慎重になっているのだと思いますし、だからこそ、先月の金融政策決定会合後の記者会見で、日銀総裁もポイントは賃金と輸出と設備投資だと語られたのではないでしょうか。

大規模緩和には、物価は上がるけど実質的な景気回復は伴わないという、いわゆるスタグフレーションのリスクがあります。円安誘導によってすでに輸入物価の上昇が起こっています。4月に消費増税がありますが、そのインパクトに拍車をかけることにもなりかねないわけです。

たとえば食料品やガソリン、灯油、燃料などのほうが、給料よりあがってしまったら、同じ給料で買うことができる品物は少なくなります。つまり実質賃金はマイナスです。家計は苦しくなるわけです。だからこそ、日銀総裁もポイントの一つは賃金だとおっしゃったのだと思います。


円安誘導でむしろ輸入原材料価格や燃料代が高くなってしまったけど、そうしたコストの上昇を価格に転嫁できずに苦しんでいる中小企業もあります。政府が賃上げを叫んでも、残念ながらそんな余裕はないというところも多いのが地方や中小企業の実態ではないでしょうか。

賃上げの原資に復興特別法人税の廃止をと考えている節があるように見受けられますが、そもそも法人税を払っているのは全体の3割。つまり7割の企業、いますでに赤字で苦しんでいる企業、多くの中小企業にとっては何の恩恵もない税制改正であるため、こうした企業については残念ながら賃上げの原資たりえません。

賃金だけではありません。いわゆる、スタグフレーションに陥らないためには、日銀総裁はポイントに挙げていらっしゃいませんでしたが、賃金に加え雇用も見過ごすわけにはいきません。


なぜなら、今の政権では解雇規制の緩和が議論されているからです。

政権に気を使って言及されなかったかどうかは分かりませんが、本来は賃金に加え雇用もポイントに挙げられるべきだったと思います。


今の政権では、解雇の金銭解決については、その「あり方は丁寧に検討を行う必要がある」とされましたが、要するに先送りされただけでくすぶり続けているわけです。


成熟産業から成長産業へ労働力の円滑な移動を図る、流動化を図る、それも一つの考え方かもしれませんが、しかしそうだとしても、順序が逆になっているのは問題です。

つまり、新しい成長産業はなんなのか、どこで雇用の受け皿を作るのか、雇用をどう増やしていくのか、そういう議論が十分に行われない中で、先に解雇規制の緩和だけが主として議論されてきました。


成熟産業でいわば退職願ますとされた人が、成長産業ではぜひうちにきてほしいということに本当になるのかという問題もあります。

成長産業で必要とされる人財になるための就業能力向上、一種の教育プログラムをどう用意するかということも議論されなければならないはずです。


ところが政府の産業競争力会議、あるいは規制改革会議の議論は、こうしたことよりも、あるいは成長産業をどうするかということよりも、まず切ることがメインになっている。


さらに、いわゆる限定正社員の制度についても、既に多くの企業で導入されており、勤務地や仕事内容などが限定されることで、自分の希望にあった働き方ができるという面もあるとの声もありますが、 しかし、今の政権では、この「限定正社員」を増やすことと、解雇ルールの見直しとがセットで議論されています。


つまり、これまでの正社員から、勤務場所や仕事内容を限定した「限定正社員」になった場合、会社が勤務地や仕事内容を廃止しさえすれば、正社員なのに、いとも簡単に解雇できる仕組みとなってしまうことも決して想定外ではありません。


これまでの正社員であれば、会社は解雇を回避するために、みずから努力して新たな勤務地や仕事を探す義務を負っていました。しかし限定正社員は、そうではありません。


つまり、解雇しやすい正社員をつくるために、この限定正社員制度が導入されてしまう可能性は否定できないということです。


賃金の先行きすら不透明な中で、ましてや雇用までこの先一層不安定化していくおそれがあるとすれば、内需には強烈な下押し圧力がかかっていくことにもなりかねません。そうなれば、たとえ円高修正で輸出企業の採算が改善したとしても、それは前回の実感なき景気回復と同じことになりかねないのではないでしょうか。


第一次安倍政権は、いざなぎ景気越え(02年2月~08年2月)だ、イザナミ景気だと言われた時期に誕生(06年9月~07年8月)しました。けれども当時は、日経平均が1.9万円、2万円となっても、実感なき景気回復と言われました。


企業の経常利益は上がっても、一般の人の給与にははねかえらなかったからです。非正規雇用も増加し、民間の平均給与も下がり続けたからです。


今の産業競争力会議が議論しているように、雇用の受け皿も考えないままに解雇規制だけが緩和されれば、たとえ円高修正で企業収益が改善したとしても、前回の実感なき景気回復と同じことになりかねないのではないでしょうか。

日銀総裁が挙げたもう二つ、輸出と設備投資はまた次回以降で。


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写真は1月25日アルパークの街頭演説にて